
第一弾

3月25日(金)より、UPLINK吉祥寺にて緊急連続公開決定!
ビー・ガン (ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ / 凱里ブルース)、キム・チョヒ (チャンシルさんには福が多いね) など、海外の機影の新人監督たちを配給するリアリーライクフィルムズが、日本のインディーズ・シーンの将来有望な映画作家にフォーカスする、《ReallyLikeFilms SHOWCASE》第一弾。俳優の肉体を通して表出される生きることの苦しみや刹那を描き続けている矢野瑛彦監督の長編・短編三作品をピックアップする。



人はなんのために生まれてくるのだろう。
いづれこの世の中からその存在が消えてしまうなら、
この生に在る苦しみや悲しみにはどんな意味があるだろうか?
思春期真っ只中にある多感な雄晃は、母親の余命宣告を受けて、その事実を受け止められずにもがいている。
母親自身も、自らが直面する過酷な現実と、先立つ者の良心の呵責に苛まれ自責の念に囚われ、父親も子供達との確執に加え、先の見えない不安と親としての責任が重くのしかかる。
雄晃の姉は、婚姻関係のない男の子供を身篭っていて、母親の死が、新しい生命の代償ではないかと自問自答している。
監督の矢野瑛彦は、同年代の映画作家たちが技巧的な表現の探究に軸足を置く傾向にあるのとは真逆の演出スタイルを貫いている。
そこには気の衒(ルビ=てら)いなどない、真っ直ぐで荒々しい、だからこそ聞きしに勝るリアルな感情が、観客の心を大きく揺さぶる。
本作でも、生と死、喪失による無為と狂おしいほどの怖れが、俳優たちの肉体を通して圧巻の迫力で表現されている。
主役の雄晃を演じたのは、宮崎を中心に芸能活動を続けている新人の上杉一馬。矢野監督がオーディションで抜擢した逸材だ。多感な少年期の主人公を等身大で演じている。
父親役には、話題の劇団・小松台東に所属する瓜生和成。母親を演じた川隅奈保子、姉役の井上みなみは青年団に籍を置く俳優で、深田晃司監督作品にも出演している。
また、夜ハ短シ が本作のために主題歌『yes,yes,yes』を特別に書き下ろし提供していることも、大きな話題を集めている。
なお本作は、矢野監督の出身地である宮崎で撮影された。






物語
余命宣告を受けた母親・小百合が入院するその日。夫の正晃、娘の樹莉は平静を保ち、真情とは裏腹に明るく振る舞おうと努めている。しかし末っ子の雄晃だけは違った。思春期の彼には、まだその過酷な現実を受け止めることができない。彼はやり場のない感情を自制することができなくなり、病室から逃げるように飛び出してしまう。そしてその感情は、やがて刃となって家族を追い詰めていく…。
矢野瑛彦監督作品選 yes,yes,yes
上杉一馬 瓜生和成 井上みなみ 川隅奈保子 [ 2021年日本 | 75分 | 日本語 | ビスタサイズ | 5.1ch | DCP・Blu-ray ]
配給 : リアリーライクフィルムズ + アルミード ReallyLikeFilms SHOWCASE 第一弾 ©️矢野瑛彦
同時上映: 短編[賑やか Neon City]※[yes,yes,yes]の同時上映作品となります。

恋人の借金の肩代わりをすることになった、元お笑い芸人の優作。 借金の返済の一部で、ある男の持つバッグを盗むことを強要される。 バック強奪には成功するが、綺麗な街のネオンの明るさとは対象に、孤独で最悪な夜が始まる。
矢野瑛彦監督・脚本作品
武谷公雄 奥津裕也 岩瀬亮 木村知貴 藤野晴彦
プロデューサー :矢野瑛彦 撮影 : 矢野瑛彦 / 長友孝和 音響 : 松本昌之 照明:浦原真一 制作:福名理穂 整音:高橋和也 音楽 : 高橋基史 編集 : 矢野瑛彦 協力:ENBUゼミナール[ 2017年日本 | 26分 | 日本語 | ビスタサイズ | 5.1ch | DCP・Blu-ray ]



愛されることと愛すること。
その均衡の中で、私たちは人を知り、自分を知る。
だけど、世の中はそんなにうまくいかない。
これは由紀子とあなたの、ありふれた愛の物語。
奔放な母の元で、息苦しい生活を送ってきた由紀子。
代わる代わる父と名乗る男が出入りする家で、彼女はいつも孤立していた。
母は由紀子を「あんたの良いとこはわがままを言わないこと」と褒めた。
由紀子のモノクロームの思春期に、わずかな彩りを与えてくれたのは、何人目かの父親。
フォトグラファーらしかったその男からブレゼントされたカメラが、彼女の人生観を一変させる。
──レンズから覗く世界は、途端に色彩にあふれる。
そんな彼女の前に、「わがままを聞いて欲しい」という男が現れる。






『yes,yes,yes』で生と死の喪失と矛盾を描いた矢野瑛彦監督が、『yes,yes,yes』の5年前に発表した『pinto』で描くのは、独善的な人々の愛に対する向き合い方。母親からも、彼からも、愛していても愛されている実感が持てないヒロインを通して、若いある時期にだけ感じることのできる愛の探求と冒険が、クールなカメラワークの中に見事に写しとられていく。
どこにでもあるような物語を、リアルに肉付けする俳優たちは、由紀子役の小野寺ずるを含め、演劇界で活躍する俳優たちだ。矢野監督は、彼らの肉体を通して、生臭い青春の一項を炙り出していく。それはどこか懐かしさも憶える心象風景のようだ。
矢野瑛彦監督・脚本作品「pinto」
小野寺ずる 大橋一輝 永峰絵里加 木村知貴 坊薗初菜 岡野康弘 矢野瑛彦 富永敬太
[ 2016年日本 | 118分 | 日本語 | ビスタサイズ | 5.1ch | DCP・Blu-ray ] 配給 : リアリーライクフィルム + アルミード ©矢野瑛彦
矢野瑛彦監督プロフィール

監督の矢野瑛彦は 1985 年宮崎県宮崎市出身。 短編映画、『賑やか』(2017) が札幌国際短編映画祭、ジャパンパノラマ部門に入選。 長編映画『pinto』(2016) で第4回新人監督映画祭(2017)長編部門グランプリを受賞。 新作『yes,yes,yes』(2021) は、大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門に選出されたのを皮切りに、ドイツ Nippon Connection など国内外の映画祭で上映され、高い評価を獲得している。またフォトグラファーとしての一面も持つ彼は、監督のみならず撮影も担当。エッジの効いたクールな映像は、若かりし頃のカサヴェテスの映画のように、俳優たちの肉体と感情をフォローし、圧巻の迫力で炙り出していく。
監督の矢野瑛彦は 1985 年宮崎県宮崎市出身。 短編映画、『賑やか』(2017) が札幌国際短編映画祭、ジャパンパノラマ部門に入選。 長編映画『pinto』(2016) で第4回新人監督映画祭(2017)長編部門グランプリを受賞。 新作『yes,yes,yes』(2021) は、大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門に選出されたのを皮切りに、ドイツ Nippon Connection など国内外の映画祭で上映され、高い評価を獲得している。またフォトグラファーとしての一面も持つ彼は、監督のみならず撮影も担当。エッジの効いたクールな映像は、若かりし頃のカサヴェテスの映画のように、俳優たちの肉体と感情をフォローし、圧巻の迫力で炙り出していく。
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